給水ポンプユニットの圧力タンクについて
加圧給水ポンプユニット、増圧直結給水ユニットともに使用されてい

る圧力タンクについてお問い合わせが多いので、今回ご説明いたします。


現在、各メーカーの主力機種で使用されている圧力タンク(アキュームレータ)

は隔膜式、ダイヤフラム式、ブラダ式と呼ばれるタイプです。

タンク内のゴム製隔膜が伸縮を繰り返していますので寿命があります(詳細は後述します)。

メーカーでは半年ごとに点検し圧力タンク内封入空気圧力を適正に

保つよう取扱説明書に記載しています。1年に1回でも点検は必要と考えます。

メーカーでは3年ごとに圧力タンクを交換するよう推奨しています。

 

タンク内はゴム製の隔膜で水室と空気室に分かれています。タンク

の中にゴム風船が入っていて、風船のクチがタンクの先端の空気バルブ

に繋がっているイメージです。水室は給水配管に繋がっています。

圧力タンク内の空気室には適正な圧縮空気が入っている必要があります。

この封入空気圧が不足すると、起動頻度過多(インチング、ハンチング、チャタリング)

と呼ばれる症状を生じてしまいます。ポンプが短時間内でON/OFFを繰り返してしまう現象です。

こうなると建物上階では水圧が強弱を繰り返してしまい、

機械部品や電気部品の消耗が激しくなります。消費電力

増加、ポンプ過熱、水撃音(ウォータハンマ)発生、モータ保護装置作動、

モータ焼損、断水にまで至ることもあります。

 

ここから詳細をご説明いたします。

隔膜として使用されるゴムは長期間のうちに空気を透過してしまいます。

水室に空気が漏れ出しているのです。他に空気バルブ

(タイヤの空気バルブと同じ構造)から漏れ出すケースもあります。

自転車のタイヤも時間の経過で空気が抜けますね。したがって、圧力タンク

は定期的に封入空気圧力を点検し、不足しているなら空気を補給する必要があります。

タンク内では水室内の水圧と空気室内の空気圧が一定の差圧で

バランスしていなければなりません。このバランスが崩れると圧力

タンクの機能を発揮できません。空気圧が不足している状態だと、

ゴム製の隔膜が設計範囲を超えて伸びてしまっていますから、

隔膜が破損しやすくなります。つまり空気圧が適正で

あれば圧力タンクの寿命が長くなります。

 

どうして空気が必要なのか。

 

給水ユニットは給水管内の圧力を検知してポンプを自動制御して

います。設定された起動圧力を検知するとポンプは運転を開

始します。水が使用されなくなると配管内の圧力は上昇し、

水の流れが無い(使用が無い)ことを判断して停止します。

 

水は非圧縮性流体で、空気は圧縮性流体です。昔ながらの水鉄砲

(ところてんの天突き器のような形状)をイメージしてください。

中に水を入れ押し出しますが、先端を塞いだら棒を

押すことができません。水は圧力を加えても殆ど体積が変化

しないからです。対して水鉄砲の中が空気だと、棒を押すこ

とができます。空気は圧力を加えると圧縮されて体積が縮小

します。この状態で棒の手を離すと、圧縮された空気は元の

体積に戻るよう膨張し、ひとりでに棒が動きます。この空気

の特性を利用しているのが圧力タンクです。

 

給水ユニットが自動停止している(建物内で水が使用されていな

い)状態では、給水配管内の水圧は上昇したまま保持されて

います。圧力タンク内は水圧で空気が圧縮された状態です。

ここで極少量の水を蛇口から出します。この時、圧力タンク内

では空気室内の圧縮された空気の体積が元に戻ろうとし、隔

膜を水室側に押し広げます。すると水室内の水がタンクから外に

押し出されます。配管内の水圧は変化ありません。蛇口から

水が出続けています。給水配管内の水圧が圧力タンク内の空気

圧を下回り、その瞬間から給水配管内の水圧は低下し続けま

す。すると設定された始動圧力に達して、ポンプは運転を開

始します。つまり、ポンプ停止状態から起動までの時間を稼

いでくれるのが圧力タンクです。やがて水の使用が無くなると、

給水ユニットは昇圧(加圧)運転に切り替わり、圧力タンク内の空

気を圧縮してから停止します。

 

圧力タンク内の空気圧力が適正で無いと、この時間稼ぎが無く

なり、起動頻度過多となってしまいます。給水配管内に圧力

タンクが無い(或いは封入空気圧力が適正で無い)状態では末

端の蛇口で数滴の水が出ただけでも配管内圧力は低下してし

まいます。水は圧縮されないからです。

 

極少量の水が使用され続けると、ポンプ始動→使用水量が少

ないから停止する→極少量でも水が使用されていれば給水配

管内の水圧は瞬時に低下する→ポンプ始動・・・を繰り返す、こ

れが起動頻度過多です。

 

隔膜が動かないほど封入空気圧力が高すぎても、圧力タンクの

性能を発揮しませんから起動頻度過多になりますので、注意

してください。

 

封入空気圧力の算出については各メーカーで規定がありますが、

大雑把に「始動圧力の50~90%」と言えます。高層の建物

であれば封入空気圧力の%も上昇します。

 

「圧力タンクは1年に1回点検し適正な状態を保持する。隔膜の

劣化などで封入空気圧力を保持できなくなったら交換が必要」

というお話しでした。